「この映画、猫が出てます」をご愛読いただきありがとうございます。
次回の作品は
『雪国』(1957年/日本/監督:豊田四郎)
温泉宿の客・島村への芸者駒子の想いは葛藤に揺れ動く。
岸恵子と池部良が川端康成の原作に挑む、情緒あふれる文芸作品。
越後湯沢駅近辺の当時の風景、鉄道にも目を奪われる。
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猫美人です。新年のご挨拶を申し上げます。
毎年末に今年の漢字というのが発表され、昨年は「金」が選ばれました。
わたしも「金!」と言いたかったところですが、昨年は新年早々新型コロナに感染し2カ月ほど後遺症に悩まされたり、住まいの一部が破損したり、兄、叔母、師匠、おかかえ絵師の愛猫のキッキッちゃんが亡くなったりと、あまり穏やかではない1年でした。今年は少しのんびり過ごせればと思っています。
良かったのは、ブログを始めた当初3年続けるという目標を掲げていましたが、それをクリアできたこと。昨年末までに133本の映画について書きましたので、一つの映画に複数の猫が出ていたり、同じ猫がほかの映画にも出ていたりしていますが、単純計算で133匹の猫を紹介できたことになります。短い猫の命、そこに出演した猫たちのほとんどは今はこの世にいないでしょう。けれどもこうして映画にちらりとでも映ることで何十年もあとに生まれた人間に「かわいい」と思ってもらえるなら、猫たちも草葉の陰で喜んでいるだろうと思っています。
そして猫をダシに、こんな映画知らない、とスルーされてしまいそうな映画を取り上げることで、「一度見てみようか」と関心を持っていただければ、というのが猫美人の望みです。
今年も古い映画、レアもの映画が飛び出しますよ。
明けましておめでとうございます。
昨年に引き続きイラストを描かせていただく絵師の東洲斎茜丸です。
今年の干支は巳年だそうです。巳はヘビのことなんですね。
ヘビというと、子供の頃の漫画「児雷也(じらいや)」を思い出します。(古いなあ!)
児雷也の宿敵の妖術使いが大蛇丸(おろちまる)。物語上の悪役です。
大蛇に乗って現れては、ヒーロー児雷也を苦しめました。
児雷也は手も足も出なく、いつも脂汗を流すばかりで、
私はイライラさせられた記憶があります。
だって、児雷也の操るのは大ガマですからね。カエルがヘビに勝てるわけがない。
ヒーローなのになんで武器はカエルなんていう設定にしたんでしょうかねえ?
今もって納得できません。
児雷也の唯一の味方が綱手姫(つなてひめ)で、妖術で現出させるのは
大ナメクジっていうのはねえ…。結局、大蛇丸がいちばん強い。
あ、何の話でしたっけ? つまりその何ですよ。大蛇丸みたいに強気で今年も描いちゃうぞ、ってことで、どうでしょう。
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不老不死の秘薬を飲んだ女たちの若さへの永遠の執着!
ばかばかしくも人生への警告が潜むブラックコメディ。
製作:1992年
製作国:アメリカ
日本公開:1992年
監督:ロバート・ゼメキス
出演:メリル・ストリープ、ゴールディ・ホーン、ブルース・ウィリス、
イザベラ・ロッセリーニ、他
レイティング:一般(どの年齢の方でもご覧いただけます)
◆◆ この映画の猫 ◆◆
役:☆(ほんのチョイ役)
ヘレンの飼い猫たち
名前:不明
色柄:キジトラ、茶トラ、茶白、黒白、白、三毛など7、8匹?
前回の『媚薬』(1958年/監督:リチャード・クワイン)に引き続き、今回も怪しげな薬が登場する映画です。若く美しい肉体を取り戻そうと手を出したその薬、自然の摂理に逆らったツケは飲んだ二人の女に容赦なく降りかかります。
監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)でおなじみ、ロバート・ゼメキス。このブログでは『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)をご紹介したことがありましたね。肩の凝らない娯楽作品で次々ヒットを飛ばしていますが、中でもこの『永遠に美しく・・・』では、若さを追求する二人の女性の特殊メイクや、どんなになっても死なない肉体の描写がおかしいやら気味悪いやらで、当時大きな話題に。
気楽に流して見ても楽しいですし、年末年始という節目に、年を取ることの意味を考えるきっかけとしてもいいかもしれません。
俳優のマデリーン(メリル・ストリープ)は年齢と共に容色・人気とも衰えが目立ってきていた。ある日の舞台後、昔の友人のヘレンが有名な美容外科医で婚約者のアーネスト(ブルース・ウィリス)を連れて楽屋に訪ねてくる。昔から人の男を奪うのが得意だったマデリーンは、アーネストを奪い取って結婚してしまう。
7年後、傷心のヘレンはストレスからムチャ食いして激太り。心理療法を受けて文筆業の道に取り組む。
その7年後、50歳になったアーネストとマデリーンの不仲の夫妻はヘレンの出版パーティーに招待され、プロポーションも美貌もピチピチのヘレンに再会。ヘレンはアーネストに接近してマデリーンから彼を奪い返そうとする。
そんなとき、若い愛人にふられたマデリーンは、悔しさとヘレンへの対抗意識から、以前エステ店で名刺をもらったことがある美容家の女性のもとを訪ねる。現れたリスル(イザベラ・ロッセリーニ)という謎の美女は、高額な不老不死・若返りの秘薬をマデリーンに飲ませ、マデリーンはバストもヒップもキュッとなって自信満々で帰宅する。
ヘレンからマデリーン殺害計画を吹き込まれていたアーネストは、帰って来たマデリーンと口論になって彼女を階段から突き落としてしまう。マデリーンが死んだとヘレンに電話している間に、マデリーンは顔が背中側に向いた姿で立ち上がる。リスルの秘薬を飲んだため死なないのだ。
ヘレンが様子を見に駆け付けると、マデリーンはピンピンしている。マデリーンはヘレンとアーネストが自分を殺そうとしていたと知ってライフルでヘレンを撃つが、ヘレンはプールに沈んだあと、お腹に大きな穴が開いた状態で水から上がる。彼女もリスルの秘薬を飲んだのだ。二人はスコップを手に激しく戦う。
あきれたアーネストは逃げ出そうとするが、美容外科医から遺体修復師に職を変えた彼は、いまや死ねない二人の美女の外見をメンテナンスするためになくてはならない存在だった。
マデリーンとヘレンは仲直りして、アーネストに永遠に二人のために働いてもらえるよう、リスルの秘薬を飲んでもらおうと仕向けるのだが・・・。
スレンダーの見本のようなゴールディ・ホーンが演じるヘレン、何度も自分の恋人をマデリーンに奪い取られていながら、性懲りもなく婚約者のアーネストをマデリーンに会わせてみると、案の定マデリーンにしてやられます。7年後のヘレンは、ゴミや食べ物などが転がった汚い部屋で独身暮らし。ブクブクに醜く太った姿でテレビの前にひっくり返り、缶詰からクリームのようなものを手づかみで食べています。薄笑いしながら繰り返し見ているのは、マデリーンが出演したビデオの、彼女が殺される場面。そして部屋の中にはゴミと同じくいたるところに猫が。茶トラ、黒白など全部で7、8匹でしょうか。
猫を飼っている独身女は結婚できないとか、寂しい独身女は猫を飼う、とか言われますが、アメリカでも同じように言われているのか、この場面はその都市伝説を誇張してビジュアル化しています。そういえば『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』でも、デキる独身女性がロミオという猫を溺愛していましたね。
猫美人も若かりし頃、猫の飼えるアパートを捜していたとき不動産屋から「猫なんか飼ってると猫に情が移って結婚できない」と言われました。この説は立証困難とはいえ、世界中で似たようなことが言われているとしたら、ある面では真実を伝えているのかもしれません。猫好きだから結婚できないのではなく、猫を愛するタイプの人は結婚や人的交流よりも単独行動を好み、結果として独身者が多いとか? それが行き過ぎると、ヘレンや『カミーユ・クローデル』(1988年/監督:ブルーノ・ニュイッテン)のように、猫のみを相手に世捨て人のような生活に陥ってしまうのかもしれません。
ヘレンがアーネストと婚約中に飼っていたキジトラが登場するのは始まってから8分になる直前、猫だらけの汚部屋が出てくるのは9分を少し過ぎた頃です。ヘレンはこの部屋を強制的に立ち退かされ、その7年後、50歳で美しく変身するのです。立ち退かされたあと、猫たちはどうなったのか・・・。
ユニークな登場人物、特殊メイクに視覚効果、ギリギリを攻めるスピード感ある展開など、ロバート・ゼメキス監督らしい面白さ。緊張の高まる場面で雷がとどろくところなどは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い出します。演技派で硬い作品への出演が多いメリル・ストリープが、こんなハチャメチャな役で出演するということでも話題になりました。
原題は『Death Becomes Her』。医学的には死んでいるのに、生きた姿かたちのまま存在しているマデリーンとヘレン。けれども新陳代謝が行われないため、傷などを負うとなおらないまま。遺体修復師のアーネストの力を借りないと美貌は保てないのです。秘薬をもたらした美容家のリスルはその限界を知っていて、10年たったら人前から消えるよう忠告しますが、マデリーンとヘレンは階段から落ちたり撃たれたり、あっという間にボロボロになってしまいます。
永遠に美しく、とありますが、二人の女性が執着したのは永遠の若さ。ヘレンが出版した本の題も『Forever Young』です。外見の若さにこだわり、二人は秘薬に巨額の対価を払います。
近年、容姿の良しあしが人間の価値を左右するかのようなルッキズムの問題が取り上げられることが多くなりました。スマホで簡単に写真が撮れたり、修整できたり、SNS受けを求めたりすることが、外見に過剰に意識が向く状況を生んでいるのかもしれません。昭和の頃は「親からもらった体に手を加えるなんて」などと、美容整形が罪悪のように言われたりしていましたが、言い換えれば、持って生まれたものは受け入れるという意識が、いまより強く存在していたのでしょう。
マデリーンとヘレンは、見た目の若さ・美しさだけがすべての価値と錯覚し、何も生み出さない生ける屍となってしまいます。ロバート・ゼメキス監督は彼女たちのそんな姿から教訓を読み取らせようなどとはしていません。最後まで彼女たちの愚かさをからかい、マンガ的に描き切ることに徹しています。
アーネストを演じたブルース・ウィリスが2022年に失語症を発して俳優を引退、翌2023年に認知症であることが発表され、闘病を続けていることを思うと、若さと加齢という問題の別の側面を意識せざるを得ません。
1980~90年代には『ダイ・ハード』(1988年/監督:ジョン・マクティアナン)をはじめとするアクション映画でタフな男を演じ人気絶頂だったブルース・ウィリスが、まだ60代(1955年生まれ)でこうした病気を発症したことはショックです。特に俳優という、一般の人より言葉のトレーニングを積んできた人が失語症になってしまったということに、運命の残酷さを感じます。
一般には年齢が高くなるほど認知症を発するリスクも高くなってくるそうですが、誕生してからの時間が同じくらいなら人間の発達は誰でもほぼ同じなのに対し、老化には非常に個人差があるそうです。80歳の人なら40歳のときに比べて能力が何パーセント変化、などの物差しは一律に当てはまらないことになります。
外見が若かろうが、美しかろうが、体を鍛えていようが、人より遅かろうが早かろうが、いつかは訪れる老いと死。けれどもそれは生きた証でもあります。
みんなを楽しませてくれたブルース・ウィリスが、その足跡を讃えられ、これからも彼らしく尊厳を保ち、愛する人たちと穏やかに過ごせるよう祈りたいと思います。
アーネストは、リスルの秘薬を飲むことを拒絶します。彼は普通に老化し、死ぬ人生を選択したのです。永遠に生きたくない、みんな僕を残して死んでいく、これは夢の薬なんかじゃない、悪夢だと。
87歳で亡くなったアーネストの葬儀。彼はマデリーンとヘレンから逃れたあと、愛する女性と出会い、多くの子どもをもうけ、社会に貢献する事業を展開し、人々の心に幸福のともしびを灯して天国に旅立ったのです。牧師は、彼はその成し遂げたことによって永遠の命を手に入れた、と説きます。
一方、本当に永遠の命を持ったマデリーンとヘレンはそんな彼の模範的な後半生に、教会の隅っこで毒づいています。喪服のベールの下の肌・・・神の摂理に逆らった彼女たちの最期は・・・。おっと、彼女たちは死ねないのでした。
映画の公開時、真っ赤なドレスの似合うゴールディ・ホーンは46歳、メリル・ストリープは43歳、ブルース・ウィリスは37歳と、ちょうど役柄と同じ中年の危機を自覚する頃。それを笑い飛ばせるような本作への出演は、楽しかったのではないでしょうか。
けれども一番楽しかったのは、イングリッド・バーグマンとロベルトロッセリーニ監督の娘、イザベラ・ロッセリーニかもしれません。裸の体の上に肝心なところが見えないようジャラジャラしたネックレスをかけている、ロバート・ゼメキス監督の好きそうな胡散臭い人物・美容家のリスル。秘薬を飲んで20代にしか見えない70歳の役ですが、彼女は撮影時39歳。肥満メイクや老けメイクをさせられ、首が伸びたり180度回ったり、肌に塗ったスプレーペンキがはげたりと、徹底していじられているメリル・ストリープとゴールディ・ホーンの大御所を尻目に、最後まで神秘の美貌を演じることができたのですから!(注)
映画監督のシドニー・ポラックが医師役で出ていたり、リスルの顧客のパーティーに公には死んだことになっているスターや有名人が何人か出席していたりなどのお遊びもありますので、ぜひ見つけて楽しんでください。
それでは、今年もたくさんの応援をいただきありがとうございました。明年も『この映画、猫が出てます』をよろしくお願いいたします。
よいお年を!
(注)リスルがマデリーンに「私がいくつに見える?」と聞いたとき、「38歳」と答えられてムッとする場面は、撮影時のイザベラ・ロッセリーニの39歳という実年齢にひっかけての内輪ネタだったようです。
参照: IMDb
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で、当ブログの
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(2016年/監督:ロジャー・スポティスウッド)
の記事の中で紹介した続編
が放映予定です。
今年の猫の日にも放映されたのでご覧になった方も多いかと思います。自ら出演した茶トラ猫のボブはこの続編のあと交通事故で虹の橋を渡ってしまったそうですが、こうしていつまでも映画の中で会えるのは幸せなことですね。
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