この映画、猫が出てます

猫が出てくる映画の紹介と批評のページです

予告編 次回4月22日(水)公開予定

「この映画、猫が出てます」をご愛読いただきありがとうございます。

次回の作品は

『鍵』(1959年/日本/監督:市川崑)

老いから来る衰えを自覚し、美しい妻と若い男を接近させ、嫉妬によって自分を燃え立たせようとする男。
谷崎潤一郎の文学を大胆にアレンジした市川崑流の愛欲の世界。

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ラブリー・オールドメン

近所に美女が引っ越して来て、ケンカ友だちのじいさん二人組のハートに火が点いた! 二人の老いらくの恋は実るのか!?

 

  製作:1993年
  製作国:アメリカ
  日本公開:1994年
  監督:ドナルド・ペトリ
  出演:ジャック・レモン、ウォルター・マッソー、アン・マーグレット、
     バージェス・メレディス、ダリル・ハンナ、他

  レイティング:一般(どの年齢の方でもご覧いただけます)

  ◆◆ この映画の猫 ◆◆
  役:☆☆(脇役級)
    主人公ジョンの飼い猫
  名前:スリック
  色柄:長毛の黒と茶の二毛(続編ではグレー)

 

◆老いらくの恋

 以前、高齢者を主人公とした映画を3回連続シリーズでご紹介したことがありました。『ねことじいちゃん』(2018年/監督:岩合光昭)『ウンベルトD』(1952年/監督:ヴィットリオ・デ・シーカ)『ハリーとトント』(1974年/監督:ポール・マザースキー)と、いずれも主人公の老人とそのペットとのかけがえのないパートナー関係を描いた作品です。
 今回は少々方向性を変え、高齢者の愛と性を描いた映画を2回連続でご紹介します。
 第1弾の『ラブリー・オールドメン』は、幼馴染でお互いを「アホウ」「マヌケ」と呼ぶ70歳前後の二人の男が、恋のさや当てに火花を散らすコメディ。
 主人公の二人を演じるのが、1950~60年代を中心に活躍したジャック・レモンとウォルター・マッソー。二人は1966年のビリー・ワイルダー監督の『恋人よ帰れ!わが胸に』で初共演して以来のアメリカ映画界きっての名コンビ。演技を超えて息の合ったところが見られます。
 二人の恋のターゲットの女性を演じたのはアン・マーグレット。これもまた1960年代に活躍した女優・歌手・ダンサー。セクシーかつ清潔感のある美女です。
 実は私、子どもの頃、宝物入れの箱の蓋にアン・マーグレットの写真を飾っていたのですが、彼女のようになりたかったのでしょうか。悲しいかな、だいぶ違う方向に育ってしまいましたが。
 この3人の共演で往年のファンを集めるべく作られたような他愛のない映画ですが、年をとっても子どもじみた喧嘩をやめない二人がほほえましく、こんな友だちがいれば高齢期も悪くない、と思わせてくれる罪のない一本。ジャック・レモンの父親役のバージェス・メレディス(『ロッキー』(1976年/監督:ジョン・G・アヴィルドセン)のトレーナー役)が、二人以上に元気なイケイケ老人を演じているのも愉快です。
 ソフィア・ローレンが共演した続編の『ラブリー・オールドメン/釣り大将LOVE LOVE日記』(1995年/監督:ハワード:ドゥイッチ)についても、この記事の中で併せてご紹介します。

◆あらすじ

 アメリカ、ミネソタ州ワバシャの、湖に近いある町。
 リタイア後はもっぱら釣り三昧のジョン(ジャック・レモン)とマックス(ウォルター・マッソー)は隣同士に住む幼馴染で、会えばののしり合う仇同士のようなケンカ友だち。二人とも一人暮らしで気ままな生活だ。
 ある日二人は、向かいの家に魅力的な女性(アン・マーグレット)が引っ越してきたのを見てたまげる。
 その女性は真夜中、ジョンの家にトイレを貸してと言って入り込んだ。彼女はアリエルと名乗り、お向かいのジョンとマックスの人柄を知ろうと勝手に郵便を盗み読みしたりしていた。彼女も独身で、遊びに来てね、と言ったりする。
 ジョンもマックスもアリエルに興味津々だったが、一向にアプローチしようとしない。二人を尻目に釣エサ店のチャックが感謝祭の夜アリエルの家を訪問したのを見て、ようやく二人は動き出す。
 初めに行動したのはマックス。釣り小屋にアリエルを招くとアリエルは大はしゃぎ。だが、その夜アリエルはジョンの家のキッチンに勝手に上がり込んで夕食を作り、ジョンと食卓を囲んでいいムード。90代の父親に発破をかけられジョンは彼女を誘って遊びに出かける。その夜二人は「X年ぶり」の不安も乗り越え結ばれる。翌朝ジョンの家から出てきたアリエルを見てマックスの嫉妬心に火が点く。
 マックスは妻をジョンに寝取られたという過去まで持ち出し、湖の釣り場でジョンに乱暴狼藉をはたらく。ジョンはアリエルから距離を置こうとし、ショックを受けたアリエルはマックスに近づく。
 クリスマスで帰省したジョンの娘(ダリル・ハンナ)とマックスの息子は父親たちを仲直りさせようとするが・・・。

◆刺客登場 

 舞台となったワバシャの街は、感謝祭(アメリカでは11月の第4木曜日)前だというのにすっかり雪が積もっています。ジョンは茶と黒の長毛の猫・スリックと気ままなやもめ暮らし。開始から15分04秒頃、スリックと一緒に寝ていると物音がして、差押えの税務署員かと思ったジョンはベッドを抜け出して雪の積もった屋根の上に逃げますが、滑って転落。そこにアリエルが立っていて「トイレを貸して」と声を掛けます。向かいの家の住人がトイレを貸してくれとは不自然ですが、その住人の人柄が一番わかる場所を見たいと言われ押し切られてしまいます。
 猫のスリックの出番はここと、24分48秒頃のジョンがテレビで宝くじの当選発表を見るため椅子に座ろうとスリックをどかす場面と、53分22秒頃、ジョンが帰宅したとき2階から降りて来る場面の3回だけですが、マックスとジョンの「おまえの猫が玄関でクソをした」「そう仕込んだんだ」という会話の中でも登場します。
 猫は犬と違ってそういうオープンな場所では排泄しないはずですが、続編の『ラブリー・オールドメン/釣り大将LOVE LOVE日記』では、その犯行現場を具体的に映像化。開始から66分23秒頃、マックスの家の玄関に配達された朝刊の上に立派なブツが。そばにいたスリックはご丁寧にマックスにニャーと朝のご挨拶。マックスは前もって動物保護施設から譲り受けていた凶暴な犬をけしかけて、猫とジョンに仕返しするのです。実はその前(65分05秒頃)にもマックスの車のシートでジョンがスリックに爪とぎさせるというくだりがあって、マックスの怒りはごもっとも。逃げ帰ってきた猫と追ってきた犬のおかげでジョンの家の中はめちゃくちゃ。
 本編に出演した黒茶の二毛のスリックは照明の暗い室内にいてよく見えませんが、続編のスリックはグレーの猫に替わっていて、自然光の中で生き生きした表情としぐさを見せてくれます。追いかけた犬は片目のブルドッグ。動物タレントと思われる2匹、いい仕事してますね。
 続編の最後でマックスはスリックと仲直り宣言をします。

◆◆(猫の話だけでいい人はここまで・・・)◆◆

◆持つべきものは

 憎めないかわいいじいさんたちをイメージさせる日本版の題名とはちょっと違い、原題の『Grumpy Old Men』のgrumpyとは不機嫌で不満げな様子を表すのだそう。よくいますよね、口を開けば文句ばかりというお年寄り。
 少年時代から憎まれ口をたたき合いながらもずっとそばを離れない二人、税務署員が差押えの告知に来てジョンを知らないかと二人に尋ねたとき、他人のふりをして話をはぐらかそうとするジョンをいいことに、彼の隣でマックスは「卑劣で薄汚くずる賢いジョン」と言い放ちます。
 時には舌戦以外にも、釣った魚を相手の車の中に忍ばせ、腐ったにおいで攻撃するなどという時限爆弾的な嫌がらせも。それだけ憎しみ合っているならどちらかが引っ越せばいいのにそれをしないのは、互いが互いを必要としている証拠。片割れに何かあったらもう一方がガックリ来てしまうでしょうから、二人ともいつまでも悪口を言い合って長生きしてほしいものです。
 こんな宿敵のような二人を中心に、ジョンの娘とマックスの息子の幼馴染同士がカップルになるのかならないのかというサブストーリーもからめ、突然引っ越してきたアリエルをめぐって親父どもの恋の駆け引きと意地の張り合いが炸裂します。
 『ラブリー・オールドメン』製作時、ジャック・レモンは1925年生まれの68歳、ウォルター・マッソーは1920年生まれの73歳。実年齢相当の役で、二人とも老け役にふさわしい年輪の重ね方をしていますが、驚くのはアリエルのアン・マーグレットの若々しい美貌。1941年生まれの彼女は52歳、普通の女性なら更年期を迎えお疲れの見える頃ですが、10歳は若く見えます。ジャンプスーツでスノーモービルに乗る姿のカッコいいこと。アリエルは家の脇にサウナ小屋を建て、ある日そこから飛び出し一人ではしゃいで雪の中を転げまわります。が、そのときの青いレオタード姿にはやはり年齢が・・・。私の宝箱の写真の頃に比べるとだいぶふくよかになっています。ちょっと代役が演じているという気がしないでもありませんが。

◆レモンとマッソー

 ジャック・レモンについては『媚薬』(1958年/監督:リチャード・クワイン)のときに少々触れましたが、この人が出て来ると独特の空気が生まれる俳優。アメリカ人の平凡な男性を演じつつ、かつ人を惹きつけずにおかない特別なものがあります。
 先ほどの『恋人よ帰れ!わが胸に』など、ビリー・ワイルダー監督作品の常連で、女装姿で笑いを呼んだ1959年の『お熱いのがお好き』や1960年の『アパートの鍵貸します』などが代表的な出演作ですが、1962年の『酒とバラの日々』(監督:ブレイク・エドワーズ)でのシリアスな彼には目を見張りました。妻と共にアルコール依存症になる男性の役。禁断症状に苦しむ演技には鬼気迫るものがありましたが、ジャック・レモンは役に入り込み過ぎて精神のバランスを崩しかけたと聞いたことがあります。
 相手役のウォルター・マッソーは大きな鼻になんとなくムッとして見える顔つきがたしかにgrumpy、と言えそうです。『恋人よ帰れ!わが胸に』のジャック・レモンに詐欺を指示する弁護士役でアカデミー助演男優賞を受賞。『シャレード』(1963年/監督:スタンリー・ドーネン)で主人公のオードリー・ヘップバーンに命を狙われていると警告する大使館員の役など、どちらかと言えば悪相を生かした役柄が似合っているかもしれません。

◆傑作NG集

 さて続編の『ラブリー・オールドメン/釣り大将LOVE LOVE日記』では、そのウォルター・マッソーのマックスと、ソフィア・ローレンが演じるマリアというイタリア人女性の衝突と恋が描かれます。本編でアリエルの家を最初に訪問した釣エサ店のチャックが亡くなり、その跡にソフィア・ローレンがリストランテを開店したのが面白くないマックスとジョンが、営業妨害工作を行うのです。こちらも他愛のない映画ではありますが、1934年生まれのソフィア・ローレンも還暦を越えながら衰えぬ美貌とバスト。

 この本編・続編とも見落としてはならないのが最後のNG集。ジョンの90代の父親を演じたバージェス・メレディスが、ジャック・レモンと二人で釣エサ店のチャックがアリエルの家に入って行くところを見つめる場面で品の悪い下ネタを連発するのです。これ、本来のセリフをアドリブでわざと言い換えているのでしょうか。真面目に演技していたジャック・レモンも思わず苦笑。そのほかにも高齢者にありがちな、ウォルター・マッソーのセリフ忘れ、取り違え、そしてソフィア・ローレンへのセクハラ(?)などなど。
 ジョンの父親はこの続編で亡くなりますが、実際、これがバージェス・メレディスの最後の映画になりました。

 映画を見たことがない方でも美しい愛のテーマ曲はどこかで耳にしたことがあるかもしれません。作曲は『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)『永遠(とわ)に美しく』(1992年)他のロバート・ゼメキス監督作品など、数々の映画音楽を手掛けたアラン・シルヴェストリ。本編ではジョンとアリエルの愛のムードが高まる場面で流れます。この曲が好評だったのでしょう、続編ではエンドクレジットほか随所で色々なバージョンを味わうことができます。続編の原題『Grumpier Old Men』のEnd Creditsで検索してみてください。


◆関連する過去作品

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記事関連映画のTV放映予定

4月8日(水) 13:00~NHKBS

で、当ブログで以前ご紹介した

『グロリア』
 (1980
年/監督:ジョン・カサヴェテス)

が放映予定です。

 

家族をマフィアに殺され、たった一人残った6歳の男の子を子ども嫌いの中年女性グロリアがマフィアから守り抜く。
初めはギクシャクしていた二人が次第に心を通い合わせる様、マフィアの女だったグロリアが男の子のために命を張るクールなアクション。
ジョン・カサヴェテス監督と妻のジーナ・ローランズが遺した必ず見ておきたい1本です。

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記事関連映画のTV放映予定

4月6日(月) 13:00~NHKBS

で、当ブログで以前ご紹介した

『僕のワンダフル・ライフ』
  (2017年/監督:ラッセ・ハルストレム)

が放映予定です。

 

イーサン少年と無二の友となった犬のベイリーが、死んだあともイーサンと再会したいと転生を繰り返す。
転生途中の飼い主との交流、イーサンと再会したのに別の犬の姿のためわかってもらえないベイリーのもどかしさ。今回の放送の告知を前に、猫美人は自分が書いたこの映画の記事を読んで涙があふれてしまいました。
そんな心が震える感動作です。

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