この映画、猫が出てます

猫が出てくる映画の紹介と批評のページです

ペット・セメタリ―(1989年)

先住民の埋葬地に埋めた死んだ飼い猫がよみがえる。男は我が子をもその方法で生き返らせようとした・・・。

 

  製作:1989年
  製作国:アメリ

  日本公開:1989年
  監督:メアリー・ランバート
  出演:デール・ミッドキフ、フレッド・グウィン、デニーズ・クロスビー、
     ブラッド・グリーンクイスト、他

  レイティング:一般(どの年齢の方でもご覧いただけます)

  ◆◆ この映画の猫 ◆◆
  役:☆☆(脇役級)
    主人公一家の飼い猫
  名前:チャーチ
  色柄:グレー(ブルー)

 

◆ペット墓地

 今回と次回は死んだペットがよみがえる映画をお届けします。
 初めはホラー映画『ペット・セメタリー』、つまりペット墓地です。ということは犬や猫などのペットゾンビがゾロゾロ出て来る映画かな、と思いきや、ペットはあくまで前座ないしはアシスタント。ペットの死をきっかけに死んだ人を蘇らせる方法を知った男やその周囲の人々が死者に襲われる物語です。
 同じ監督により続編『ペット・セメタリー2』(1992年)が作られ、また2019年にはケビン・コルシュとデニス・ウィドマイヤー監督によってリメイクされるなど、中堅どころのホラーとしてヒットした作品です。
 原作・脚本は『キャリー』(1976年/監督:ブライアン・デ・パルマ)、『シャイニング』(1980年/監督:スタンリー・キューブリック)などの原作でおなじみのスティーヴン・キング。2019年のリメイク版は、同じ原作でジェフ・ブーラーが脚本を担当、後半がかなり前作と異なっています。ここでは1989年の最初の版を軸に、リメイク版にも少々触れる形でご紹介したいと思います。どちらも死体や残虐な描写が出てきますのでご注意ください。
 映画の中で、ペット墓地の看板のsemetaryが、スペル間違いでsemataryと書かれているということになっています。この記事のイラストのスペルが違っているのはそのため。当ブログお抱え絵師の名誉のためお断りしておきます。

◆あらすじ

 医師のルイス(デール・ミッドキフ)は妻(デニーズ・クロスビー)と8歳くらいの娘のエリー(ブレーズ・バーダール)、まだよちよち歩きの息子のゲイジ(マイコ・ヒューズ)との4人家族で、郊外の一戸建ての家に引っ越してきた。娘のエリーがかわいがっている猫のチャーチも一緒だ。家は申し分ないが、すぐ前の道を大型のトラックが四六時中行き交っている。その道を隔てた向かいの家に一人で住む老人ジャド(フレッド・グウィン)が、トラックに轢かれそうになった息子のゲイジを危ういところで止め、一家と仲良くなる。
 ある日、家の敷地から続く小道をジャドに案内してもらうと、その先はペット用の墓地になっていた。道路で犬や猫が事故に遭うようになってできたといい、ジャドの愛犬もここに葬られている。
 ルイスが新しい勤務先の病院で働き始めた早々、交通事故で重傷を負ったパスコウ(ブラッド・グリーンクイスト)という青年が担ぎ込まれてくる。ルイスは懸命に処置をしたが助けることができなかった。そのとき死んだパスコウが起き上がってルイスの肩を掴み、またルイスの前に現れると言って、夜、亡霊になって姿を見せる。パスコウはペット墓地にルイスを導き、境界の崖を越えるなと警告する。
 妻と子どもたちが感謝祭で実家に行き、ルイスが一人で留守番をしている間に、ジャドが車にはねられた猫のチャーチの死体を見つける。エリーが悲しむと思い、行方不明になったことにして二人でペット墓地に埋めに行くが、ジャドは境界の崖を登り始め、ルイスについて来いと言う。頂上には先住民が作った円形の墓地があり、ジャドの言う通りにチャーチを埋めてしばらくすると家にチャーチが戻ってくる。チャーチはみちがえるほど凶暴になっていた。ジャドに話すと、ジャドはかつて愛犬を同じように葬り、犬は生き返ったが前とは違ってしまったと言う。
 そんなことがあったあと、息子のゲイジが眼を離したすきに道に出て今度こそトラックに轢かれてしまう。葬儀後、ルイスは妻と娘がしばらく実家に行っている間にゲイジの遺体を掘り返して例の場所に埋め替える。よみがえったゲイジは家にやって来た。だが、それはゲイジの姿をした邪悪な何ものかだった。ゲイジはルイスの鞄からメスを持ち出すと、向かいの家のジャドのところに現れる・・・。

◆その名はチャーチル

 一家の飼い猫チャーチ。映画が始まって5分29秒頃、車の荷台に積まれたキャリーケースの中にいるところが映ります。猫種は『17歳のカルテ』(1999年/監督:ジェームズ・マンゴールド)のときにも登場したグレー(ブルー)の毛色にオレンジ色の目が特徴のシャルトリューだと思われますが、場面によって顔や体つきの違う猫が出ているようなので、全部がそうではないかもしれません。
 チャーチの本名はウィンストン・チャーチル。『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/監督:ジョー・ライト)でご紹介した通り、猫好きのイギリスの政治家・チャーチルにちなんでこんな名前を付けたのでしょう。そういえば我が家も拾った猫にミケ・ランジェロと名付けたことがありましたっけ。
 ルイスは引っ越してきてからチャーチに去勢手術を受けさせます。娘のエリーに対して、あまり出歩かなくなれば車にはねられる危険を防げるからと説明するのですが、それにもかかわらず娘の留守中チャーチは事故で死んでしまいます。娘に顔向けできないと沈んだ顔のルイス。ルイスのそんな様子とエリーを悲しませたくないという思いから、ジャドは禁断の埋葬方法を教えてしまいます。
 よみがえったチャーチは邪悪な化け猫。ときどき『となりのトトロ』(1988年/監督:宮崎駿)のネコバスさながら、目玉がライトのように輝くさまはまさしく妖怪変化。最後はルイスにお尻に注射され二度目の死を迎えますが、ルイスはこのときチャーチの後ろ襟首をつかんで吊るしています。これは猫の三大攻撃、ひっかき・噛みつき・後脚キックを防ぐために有効なんですね。猫は子どものときに母猫にここをくわえられて運ばれるので、ここをつかむとおとなしくなるのだそうです。
 なお、この映画の中で猫の死体など、何度かハッとする映像がありますが、エンドクレジットに「この映画では動物に危害を加えていません」と出ているので、フェイクやなんらかの処置でそれらしく見せているのだと思われます。エリーのかわいいペット、のち邪悪な化け猫として、チャーチは頻繁に登場します。

◆◆(猫の話だけでいい人はここまで・・・)◆◆

◆霊の恩返し

 ペットゾンビが大集合、犬のゾンビに噛まれたら犬になってしまう・・・などという展開をわたしのように期待していた方にはあいにくですが、ペットではなく現れるのは子どものゾンビ。愛らしさ・あどけなさで天使のようだったゲイジが悪魔のような凶行を繰り広げます。
 医師という科学的な精神の持ち主のはずであるルイスを、死者のよみがえりという非合理的で衝動的な行動へと駆り立ててしまったのは、不注意で子どもを死なせてしまった親としての後悔、医学をもってしても死には打ち勝てないという無力感ゆえでしょうか。けれどもそれを前もって止めさせるポイントが二つあったのです。
 一つは、この土地で何十年も前、ある父親が大人の息子を生き返らせたという話。息子はもはや人間と呼べる存在ではなくなっていて、その頃若者だったジャドらが彼を家ごと焼いて葬ったということを、ルイスはジャドから聞いていたのです。
 もう一つは、交通事故で死んだパスコウという青年の亡霊。彼は、懸命に自分の命を救おうとしてくれたルイスに感謝の気持ちを抱き、霊となってルイスを守ろうとするのです。事故死したときの生々しい外傷のまま現れるので最初は気味が悪いのですが、ルイスが先住民の墓地に行かないよう警告したり、誤った行動をしないよう押しとどめたりします。ルイスにそれが通じないとなると、今度は娘のエリーの夢枕に立ち、パパがゲイジのお墓に悪いことをしていると知らせます。ルイスの異変を察した妻が実家からルイスのもとに駆け付けようとすると、妻には見えませんが、乗り遅れそうになった飛行機に間に合わせたり、ヒッチハイクを助けたり、涙ぐましいパスコウの恩返し。けれども妻をルイスのもとに送り届けると、「僕はここまで」と去ってしまうのです。幽霊にも限界があるということか、このご都合主義にはガクッときます。

◆あの子は今

 やって来た妻は、既にゲイジによって凶行の行われたジャドの家に入っていきます。それまでよちよち歩きで片言しかしゃべれなかったゲイジが、よみがえってからはしっかりとした足取りで歩き回り、「遊ぼう」などとペラペラしゃべるのがまたもやご都合主義ですが、これは悪霊に乗り移られているからか。
 ゲイジは猫のチャーチとの連係プレーでジャドを襲い、喉に噛みついて殺してしまいます。ゾンビに噛まれると相手もゾンビになるそうですが、ジャドはおとなしく死んでいます。ということは、ゲイジはゾンビではないのか? まあ、歩き回っている死体ですからゾンビでいいですよね。
 わたしは幼い俳優にこの手の芝居をさせるのは、その子の心の深層に何らかのネガティブな影響を与えはしないだろうかと、賛成したくない立場ですが、映画ですから適当なカットをつないでゾンビらしく見せているだけでしょう。今ではCGでなんとでもでき、そんな心配は昔話かもしれませんね。
 ゲイジ役を演じたマイコ(ミコ)・ヒューズ(1986年2月22日(猫の日)生まれ)は、この映画のことは覚えていないと思いますが、その後も映画・TVの道を歩んで、翌1990年には『キンダガートン・コップ』(監督:アイヴァン・ライトマン)や『アポロ13』(1995年/監督:ロン・ハワード)、その他いくつかのホラーにも出演し、2013年には『5 FEARS ファイブ・フィアーズ』という五感をテーマにしたオムニバスホラー映画で、5人の監督の一人を務めたそうです。その後の経歴は調べた範囲ではわかりませんでした。もしこれで映画界を退いているとしたら、ホラーでデビュー、ホラーで引退ということになります。彼の青少年期にホラーの影響はあったのか?

◆怖ければいい?

 いい幽霊パスコウの存在は意表を突いたものの、恐怖映画の中にゆるみを生じさせてしまいました。ラストについては申しませんが、俳優にならなくてよかったと思わせてくれる戦慄の映像。
 スティーヴン・キングは、先ほど挙げた作品のほかにも『IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。』(2017年/監督:アンディ・ムスキエティ)など多くのホラー映画の原作を生み出しています。が、妙におどろおどろしい怖がらせに走って見え、わたしはのめり込めません。これは監督や映画会社の意向にもよるものでしょうけれど。
 一方では『スタンド・バイ・ミー』(1986年/監督:ロブ・ライナー)や『ショーシャンクの空に』(1994年/監督:フランク・ダラボン)『グリーンマイル』(1999年/監督:同)などの感動的な作品の原作を書いた、原作者の名前で観客を呼べる売れっ子人気作家です。これらの作品には猫が出て来ず、ホラー系によく出て来るのは、彼の猫観の表われでしょうか。

 ストーリーにはルイスの妻が子どもの頃難病の姉を介護していて見殺しにしたとか、一家の家政婦が病を苦に自殺してしまうとかの傍系のエピソードがあり、浮かばれない死者の霊魂や生きている者の罪障意識といったものがにおわされるのですが、1989年版では付け足し程度で映画全体との関係が読み取れません。
 2019年のリメイク版では家政婦は登場せず、妻と病気の姉との関係がより深く描かれ、また映画全体の雰囲気もジャパニーズホラーの影響を受けたのかじわじわとした趣きに変わっています。ただ、難病で死んだ姉までお化けのようになってしまうのはどうなのか。
 リメイク版では、弟をよけようとしたトラックに巻き込まれて9歳の誕生日を迎えた姉のエリーが死んでしまいます。その後の展開は弟と姉が入れ替わっただけでほぼ前作と同様。お姉ちゃんのほうが大きいだけに、そのゾンビ的行動にはより主体性が感じられます。演出も現代的にアップデートされ、少女が変質的な凶行をするホラーの一種と見ることができるでしょう。猫のチャーチはフワッとした長毛のかわいいキジトラ。前作の猫の方が怪物的です。

 

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