この映画、猫が出てます

猫が出てくる映画の紹介と批評のページです

スペシャリスト(1994年)

爆破のプロがセクシーな美女に親の仇の始末を依頼される。彼の本当の敵は・・・


  製作:1994年
  製作国:アメリ
  日本公開:1995年
  監督:ルイス・ロッサ
  出演:シルベスター・スタローンシャロン・ストーンジェームズ・ウッズ
     ロッド・スタイガー 他

  レイティング:一般(どの年齢の方でもご覧いただけます)

  ◆◆ この映画の猫 ◆◆
  役:☆☆(脇役級)
    主人公レイのペット
  名前:タイマー
  色柄:長毛のサバ白


◆something special

 邦題で『スペシャリスト』という映画はいままでに3本公開されていて、リメイクではなく内容はそれぞれ全く別。この作品以外では、1本はイタリア・フランス等合作の1969年のマカロニ・ウエスタン(監督:セルジオ・コルブッチ)、もう1本は1984年のフランスの金庫破りもので、意外や恋愛映画やコメディのイメージが強いパトリス・ルコント監督作品。3本とも原題がそれぞれの国の言葉で『スペシャリスト』となっています。ちなみにパトリス・ルコントの映画は、この『スペシャリスト』より前に製作されていますが、日本では後から公開されています。

◆あらすじ

 コロンビアでCIAのレイ(シルベスター・スタローン)と上官のネッド(ジェームズ・ウッズ)は任務により麻薬王の車を爆破しようとしていた。直前、レイは子どもが乗っていることに気づき止めようとしたが、ネッドはとりあわず、車は爆発炎上。レイはネッドを告発してやると言って殴りつける。
 時は10年後に飛び、マイアミで爆破請負人をしているレイはある女から爆弾での殺しを依頼される。女の名はメイ(シャロン・ストーン)。子どもの頃に父母を殺され、その恨みを晴らしたいと言う。レイはメイを思いとどまらせようとするが、彼女のペースに巻き込まれてしまう。
 メイは親の仇の三人組のリーダーのトーマス(エリック・ロバーツ)を誘惑し、手下の二人がレイの爆弾で消される。悪の組織の首領でトーマスの父・ジョー・レオン(ロッド・スタイガー)は、組織の片腕として雇った男に、買収した警察と協力して犯人を捕えるよう命令する。その男はレイのCIA時代の上官のネッドだった。ネッドは、爆破事件はその手際からレイの仕事だと感づいていた。
 レイはトーマスを爆弾で仕留めるが、メイが巻き込まれてしまう。メイの葬儀の告知を見てレイが訪れると、なんと生きているメイが現れる。二人はその夜、情熱的に愛し合う。翌朝、メイの姿はなく「私は信じてはいけない女」というメモが残されていた。メイは、レイの告発でCIAをクビになったネッドがレイへの報復をたくらんで彼をおびき寄せるために使った罠だった。
 ネッドは警察を指揮してレイの隠れ家を包囲する。隠れ家にはレイによっていたるところに爆弾が仕掛けられていた。そこにはメイもいた・・・。

◆ついてきた猫

 レイの猫はその名もタイマー。自分で時限爆弾を作るレイが、仕事に不可欠な道具の名をつけて愛着のほどを示しています。タイマーは、メイからの殺しの依頼の電話を切ったあと、レイの足元についてきます。その頃はまだノラ猫か迷い猫。いつまでもついてくる猫を「俺に惚れたか」とレイが抱き上げ、自分の隠れ家に連れて行ったのです。レイについてきた夜、並んで歩く姿が背後からの光でシルエットとしてとらえられ、明かりに浮かび上がったふわっとした美しいしっぽにほれぼれします。
 レイの隠れ家のシーンでたびたび登場するタイマー。レイが精密な爆弾作りの作業をする場面で、猫が机に飛び乗って起爆でもしては・・・と思っていたら、作業場は金網で囲ってあり、近づけないようになっていました。レイが上半身裸でエクササイズをする場面では、シルベスター・スタローンの肉体に思わず見とれてしまいますが、彼の手前で黙々とごはんを食べるタイマーがちゃんと映っていますので、見落とさないであげてくださいね。
 タイマーを演じた猫の名はエルヴィス。主人公が危ない橋を渡るような映画で、ペットの猫がどうなったかまでは描かれず、猫の運命が気になって仕方がないと再三申している私ですが、この『スペシャリスト』では、ラスト近く隠れ家が爆発する直前、タイマーがいち早くシェルターに飛び込むところがちゃんと描かれています。もっとも、その後最終的にどうなったかまではわからないのですが・・・。

  ◆◆(猫の話だけでいい人はここまで・・・)◆◆

      

◆禁断のアクション

 『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年/監督:ロバート・ゼメキス)の記事で、自分にはアクション映画を見るセンスがないと言っておきながらまたもやアクション映画を取り上げてしまいました。『ロマンシング・ストーン・・・』と同じく、この『スペシャリスト』も女性による脚本。『ロマンシング・ストーン・・・』の脚本のダイアン・トーマスは、ウエイトレスをしながら脚本を書いていて、それがマイケル・ダグラスの目に留まったそうで、いわばアマチュアの脚本家だったわけですが、『スペシャリスト』のアレクサンドラ・セロスの脚本はそれに比べるとサービス精神たっぷり、こなれたプロの仕事だと感じます。
 見せ場はやはり爆発のシーンと、シルベスター・スタローンシャロン・ストーンのからみ。悪の組織に家族を殺された女性が仇を討つためにプロを頼る、というところはリュック・ベッソン監督の『レオン』(1994年)にも似ています。『レオン』でゲイリー・オールドマンが演じた殺しに異常な執着を見せるスタンスフィールドも、ネッドと重なりますね。

 レイは殺人ではなく爆破のプロのため、初めはメイの依頼を断りますが、メイの電話の声と容姿に心を動かされてしまいます。メイは女としての自分を武器にレイ、トーマス、そしてネッドとの関係をぐいぐいと築きますが、失敗することなど微塵も考えていない自信がすごい。
 それにしても爆破請負人とは普段一体何をしているのか、レイがどうやって生計を維持しているのか全くわからず。そういうことを気にしているからアクション映画についていけなくなるのですね。

◆見られる肉体

 『ロッキー』シリーズや『ランボー』シリーズでマッチョな姿がお馴染みのシルベスター・スタローンがこの映画で惜しげもなくその肉体をさらけ出しているのは、先ほども言ったようにシャロン・ストーンとのからみ。初めはベッドで、そしてシャワールームで、濃厚なラブシーンを演じます。どちらかと言えばシルベスター・スタローンの裸体を映すのが主になっていると思うのですが。
 シャロン・ストーンはこの映画の2年前の『氷の微笑』(1992年/監督:ポール・バーホーヘン)で大ブレイク。殺人容疑で警察の尋問を受ける場面でミニスカートの脚を何度も組み替え、色々な意味で話題をさらいました。セクシー女優というレッテルのもと『スペシャリスト』のメイ役は彼女に当てて書かれたのではと思うほど。が、レイと情熱がほとばしるまま抱き合う場面はともかく、電話をしながら意味もなく裸の胸を出したり、Tバックショーツのお尻を見せたり、ノーブラでぴったりしたニットのドレスを着たりなど、性的商品化された女優としての姿が目立ちます。
 彼女が悪役で出演した、猫がたくさん出てくる映画『キャットウーマン』(2004年/監督:ピトフ/ワースト映画を選ぶゴールデンラズベリー賞でこの年の最低作品賞、監督賞など4部門受賞)では、彼女は裸を見せることはありませんでしたが、主役のキャットウーマンを演じたハル・ベリーが、隠す部分は最小限のキャットスーツ(?)を着てお尻を振って歩いており、セクシーと言うより女性の性的な身体を過度に強調して見せています。猫だったら着ぐるみにすれば、と言いたいところです。

◆情報戦

 時代を感じると言えば、この映画にとても懐かしいものが出てきます。パソコン通信です。今のようにインターネットで世界中の誰とでも繋がれるようになる前、パソコンなど通信用のソフトを備えた端末を電話回線につなげて利用する会員制の通信サービスがありました。レイはこれを使って爆破請負の広告を会員用の電子掲示板に出し、メイがそれを見て電話番号を連絡してきて、それを見たレイが公衆電話でメイに電話し、通話の音声を日時別にフロッピーディスクに保存、というややこしいやりとり。けれどもそれを映画の中でつぶさに見せているので、当時としてはハイテクだったのでしょう。
 親のかたき討ちの依頼を装って裏ではネッドがレイへの復讐のためにメイを送り込もうとしていたわけですが、先ほども言ったように、インターネットと違ってパソコン通信はその運営会社に登録した会員間だけのサービス。メイにレイとコンタクトを取らせるまでにネッドがどこまで骨を折ったのやら…。
 もう一つ懐かしいと思ったのは、公衆電話の通話録音を聞いてその周囲でバスの停留所を乗り降りする物音を拾い、ネッドがレイの居場所を突き止めるところ。1963年の黒澤明監督の『天国と地獄』(アメリカのエド・マクベイン推理小説『キングの身代金』が原作)での、犯人からの公衆電話の録音で江ノ電特有の音を聞き取り、犯人の居場所を絞り込んでいく場面を思い出します。

◆熱量の時代

 映画の開始から終了まで8箇所で繰り返される爆破シーン(最後は炎のない爆発)は実写ならではの大迫力。撮影、録音、美術、安全対策・・・やり直しのきかない一発勝負です。CGによる映像加工が可能になっている今では、もうこんな大がかりで危険を伴うシーンは撮れないのではないでしょうか。『スペシャリスト』は、大勢のスタッフが映画を動かしていた、コンピュータが世の中を席捲する前の、そして女性の身体の捉え方が見つめなおされる前のひとときを示す作品であると言えるでしょう。最後に登場する大型のオープンカーも、もう何年か後の世代が見ると「なんでこんなに大きな車が必要だったのか」と驚くかもしれません。

 エンドロールに流れるディスコミュージックが映画と時代を華やかに締めくくって・・・幕。

 

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